2008.06.10

人々のこと--支えてくれたヒト

昨日、コメレスを書いていて思い出したヒトがいる。

と云っても、顔も覚えていない、すれ違っただけのヒト。

 

大学を辞めてふらりと東京へでてきた話は、仕事遍歴その2もうひとりの祖母、あたりでちらっと書いたのだけれど。

とにかく、勝手に辞めて、思いつきでふらっと東京へ行こうと決めてしまったので、なんの準備も保証もない。

東京では、とりあえず知り合いの部屋においてもらったのだけれど、親に話が届く恐れはあったし、はやく自分の居場所を確保したかった。

保険証すら持たない、なんの身分証明もない状態で、あえて云うなら、辞めてしまった、東京からは遥かに遠い大学の学生証のみ。

もちろん、無職。

こんな状態で、ふらりと不動産屋に入り、

ほとんど家出人のような現状と、

東京でディスプレイの仕事をしたいこと、

わずかな貯金はあるし、部屋が決まればすぐにアルバイトを捜すので、家賃はきちんと払うつもりであること、

連帯保証人がいないこと、

などを説明して、部屋を借りたいとお願いした。

そこは当時、全国チェーンだった大手不動産屋。話を聞いてくれた方は、たまたまそこの所長さん。

--わかりました。あなたを信用しましょう。--

そういって、彼は、その不動産屋が管理している、築2年のきれいな部屋を紹介してくれました。

ここから、ワタシの東京での生活はスタートしました。

 

当時は、特別なことって意識もあまりなかったのだけれど、後々思えば、こんな人間に部屋を貸すなんて、結構レアなケースではないのかな。

もし彼に、あなたのようなケースでは、契約不可能…と云われていたら、それでも東京への足がかりを探したかどうか、わからない。

願って叩けば、扉は開く…と信じられたのも、彼のおかげかも。

 

もちろん彼ばかりではなくて、振り返れば、どれだけのヒトの厚意をいただいて、ここにいるのか…。

きちんとお礼を伝えられたかどうかも、さだかではなかったり、ほとんど顔も憶えていないような有様で。

世間知らずな、若気の至り…を支えてくれたヒトたちに、感謝。

 

ひるがえって、今の社会ってどうなのだろう。

最近のニュースをみると、寛容のない状況のなかで、もがいているヒトが多いように思います。

チカラを抜いて、楽に呼吸できるような世の中だといいですよね。

   

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2008.03.16

人々のこと--もうひとりの祖母

忙しくなる前に、母方の祖母、しずえさん(仮名)のことも書きたいと思う。

彼女はもうすぐ91歳。今でも元気で、一人暮らしをしている。

でも、やっぱり重たい話になるので、暗い話を避けているヒトはスルーしてください。気持ちのいい日曜日の朝には向きません(爆。

 

しずえさんは、もう35年も一人暮らし。

彼女の子供たちの名誉の為にいえば、子供たちは以前から、一緒に暮らそうと誘っている。田舎のことなので、どの家でも、しずえさんの部屋を確保することは難しくない。

それでも彼女は、一人が楽…といって、ワタシの実家から歩いて10分ほどのマンションで一人暮らしをしている。

ワタシは彼女にとって初孫で、小さい頃から大切にしてもらった。実家にあるピアノも勉強机も、彼女からの贈り物である。

 

しずえさんは戦時中、大陸でワタシの母とその妹を出産した。そして戦後の混乱の中、夫とともに2人の娘を連れて帰国したらしい。

トロッコの底に娘たちを隠して…。

苦労は沢山あったのだろうけれど、あまり聞いたことがない。それより、幾つもの山を越えたところで見た、黄河の大きさが忘れられないという。

その後では、どんなものも小さく見えてしょうがないと…。

 

仕事経歴 2で、ワタシは大学を辞めて…と簡単に書いたが、実際にはそんなに簡単にことが運んだわけではない。特に母親は半狂乱であった。

閉じ込められたら、2階から脱出しよう…そんなことまで考えて、荷物をまとめていたワタシの背中に、しずえさんが声をかけた。

-- あの子のことは私にまかせて、行きなさい。 --

夕暮れの玄関、しずえさん一人に見送られて、ワタシは実家を出た。

上手く折り合えない、ワタシと母親との間に入ってくれたのは、いつもしずえさんで、その日も、振り返りもせずに走り出した孫の背中に、何を思ったのかはわからない。

 

結婚も出産もない人生を選んだことに、後悔はない。

けれど、しずえさんの顔を見るたびに、ひ孫の顔を見せていないことをうしろめたく思う。

いまだに、恩返しの方法を思いつけないでいる。

 

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2008.03.07

人々のこと--天性のハンター?

オークション好きな友人がいる。

DvFURSTENBERGのワンピースなど、これまでに、300点を超える数の商品を落札したらしい。

驚くけれど、自分のルールを決めているようだし、買い物に行く時間もない忙しさなのは知っているので、偉そうに忠告することもない。

同居している恋人は呆れ顔らしいらしいけれど、喧嘩にもなっていないようなので、まぁ問題ない。…たぶん。

問題は他にある。

それは彼女のファー好きなこと。

コート、ストール、手袋、バッグ……。

本人も白状しているように、1回のコーディネートにファーのものは多数使えない。ので、日々どこかにファー付きアイテムが出没する。

職場の上司にも、今度はどこへ狩にでかけた?…と云われているらしい(^^;。

ここまでは、彼女の問題である。

 

さらに、

それでも彼女のファーへの執着は止まらないようで、オークションで見かけた用途不明のものまで、落札してしまう。

用途不明なので、さすがに値がつかないのか、只同然らしいのだけれど、

はい、お土産…といわれて、ワタシは固まる。

写真のいちばん手前のうさぎにはしっぽまで残っている(((((゚д゚)))))

Fur_080307

捨ててもいいよと云われているけど、こんな生き物の気配がのこったもの、せつなくて捨てにくい(^^;。

 

冬の間、我が家のディスプレイに使用しているのだけれど、ときどき彼女は遊びに来て、コーヒーを飲みながら満足そうに眺めている。

ペット不可だからと忠告はしてあるが、そのうち何かつれてきそうで恐い。

 

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2008.03.05

人々のこと--いっとう最初は

新しいカテゴリーです。

春だし、仕事も一段落だし、外へ出て人間観察でもと思ったのですが、それについては、追々ということで。ちょっと重たい記事からスタートですが。

 

やはり、いちばん最初に書くのは、父方の祖母のこと。

「父方の祖母」とはかたい云い方だけれど、ちひろさん(仮名)のことを「おばあちゃん」とは呼ばなかったので、それではピンとこない。

年寄り扱いされることが嫌いなヒトだった。

 

ちひろさんは、大正生まれ。文筆家の幸田文さんと同世代。

他にも共通点がいくつかある。

一生を、きもので通したこと。花や植物を愛したこと。ずっと台所に立ち続けたこと。そして、幼い頃に母親をなくした寂しさを抱えたヒトであったこと。

ワタシが生まれたときから実家をでるまで、ずっといっしょに暮らしていた。といっても、田舎のことなので、同じ敷地に、母屋と離れの関係だったのだけれど。

それでも、彼女が、だらしのない格好をしているところを見た覚えがない。80歳を過ぎても、おしろいと薄紅を欠かさないヒトだった。

ワタシの母親が、まったく料理のできないヒトだったので、ワタシは、ちひろさんの手料理で育った。煮物、ぶり大根からハンバーグ、コロッケ、ドーナツまで。

彼女は色々なものを手作りしていて、漬物、梅干、らっきょ、残念ながらお相伴にあずかることはなかったけれど、梅酒、ぶどう酒。

洋装こそしなかったが、ハイカラでモダンなことが大好きで、少し得意そうに、切子のカットグラスでその赤いぶどう酒をたしなんでいた。

彼女のハイカラな朝食は、バタートーストとミルクティー。

毎朝、ワタシが目を覚ます頃には、きちんとした身なりでこの朝食をとっていた。

庭の片隅にあった、温室の花鉢。奥座敷のお琴。ワタシより年上だった姫金魚。おはじき。お手玉。折り紙。……。

想い出はきりがない。

 

90歳の誕生日の少し前、検査のために病院に入った。

会いたいといっている…と呼ばれて帰省した。

元気そうに見えたのだけれど、

-- そろそろお暇(いとま)します。あんたはおなご(女子)なんやから、ちゃんと綺麗に咲きなはれ。 --

そう云われて、東京へ戻った。

仕事の都合で入れ違いに帰省した妹が、東京に戻って10日後。

ちひろさんは、一人で逝ってしまった。

いつも通りに昼食をとったあと、眠るように…。

その時、ワタシは23歳。

彼女と過ごした時間の大切さが分かるようになったのは、もっと後のことだった。

 

Recollections_080305

実家にいたころも、その後帰省した折りにも、この茶碗でお茶をたててくれた。

妹が来ると、ときにはカフェオレボールにして、今でも大切にしている。

 

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